きん
Gold
  • 鮮やかな光沢をもつ黄色の金属元素。
  • 軟らかく、密度が高い。
  • 金は古代から、永遠に変わらない輝きをもつ金属として尊ばれ、貨幣や装飾品として利用されてきた。
  • 元素記号Auは、金を意味するラテン語aurumからとられたものだが、この言葉は光または赤を表すヘブライ語に由来するといわれている。
  • 黄金(おうごん・こがね)ともいう。
  • 性質
    • 高展延性
      • 軟らかい金属で、すべての金属の中で最大の展延性を持ち、成形、加工が容易。
        • 金の塊をハンマーで打ち延ばせば、およそ0.0001mmの薄さの金箔に加工できる。
        • 1gの金を約3000mの金線に延ばすこともできる。
    • 高伝導性
      • 熱と電気の伝導性は、銀、銅に次いで高い。
    • 高安定
      • 酸素や水による作用を受けず、空気中や水中ではきわめて安定。
      • 強酸、強アルカリをはじめ、ほとんどの酸化剤とも反応しない。
        • しかし、塩酸と硝酸の混合物である王水や、セレン酸H2SeO4には溶ける。
  • 存在
    • 金の大部分は金属状態の自然金として、石英の鉱脈に混じって産出する。
    • 砂金
      • 石英の鉱脈が風雨によって浸食され、含まれていた金が河川に流出して形成された、堆積物による砂礫(されき)鉱床。
    • 海水中にも、ごくわずかに含まれる。
      • とけている金は0.000004ppmといわれ、海洋全体では、550万tに達すると推定されるが、濃度が極端に小さいため、採取は困難。
        • 海水からの金採取にかかる費用は、採取された金の価格を大きく上まわると考えられている。
  • 用途
    • 人類史上、銅と並んで古くから使用されてきた金属。
      • 多くの古代文明において金が利用され、装身具や容器などの金製品がつくられた。
        • 金の利用が早くから始まった理由としては、金の優れた光沢と耐食性にくわえ、天然の自然金からたやすく精錬できること、やわらかく加工しやすいことがあげられる。
        • 貨幣金属としても古くから利用されてきたが、これは金が希少価値を持つこと、こわれたり変質しないで貯蔵できることによる。
      • 金の価値は現在でも変わらず、金地金(きんじがね)や金貨として、国際市場で大規模に取り引きされる。
        • 各国政府や中央銀行は大量の金を保管するが、個人の財産として蓄蔵される金もかなりの量にのぼる。
        • 金の計量単位はトロイオンスで、金地金や金貨の多くはトロイオンス単位で鋳造される。
          • 1トロイオンスは31.1gに相当する。
    • 装飾用
      • 各種の宝石と組み合わせて指輪やネックレスなどのアクセサリーに加工される。
        • 純金はやわらかすぎて不便なので、たいていは他の金属と混ぜ合わせて、硬度を高めたものを使用する。
          • 金に銅、ニッケル、亜鉛を加えたホワイトゴールドも、装身具にひろく利用される。
          • 金を薄く延ばした金箔も、美術工芸品や書籍などの装飾材料として使われる。
      • 装飾用以外の用途では、歯科材料、万年筆のペン先などに、金合金が使用されている。
        • 合金中の金の含有率はカラットで示される。
          • カラット表示では、純金を24Kとして数字を割り振る(K24とも表される)。
            • 代表的な金製品のカラット数は、金貨21.6K(金90%)、義歯20〜22K(金約83.3〜91.7%)、装身具18K(金75%)、金ペン先14K(金約58.3%)が標準。
    • 工業用
      • 電気伝導率が高く、耐食性にすぐれているため、電気・電子工業用に利用される。
        • 半導体集積回路を作るためのめっき用材料として、金がひろく使われている。
          • ICチップの接合に金・シリコン合金などの低融点はんだが、また、電極の接続用に金の極細線が使われる。
            • しかし、コストダウンをはかるために、銀、銅、アルミニウムなどが代替品として利用される傾向にある。
        • 電気の接点にも金が使用されている。
      • 金には高熱を反射する性質があるため、航空産業や宇宙産業では、金箔を断熱材としてジェット機やロケットなどに使用している。
      • 鉄との合金は、極低温領域のセンサーに使われている。
  • ゴールドラッシュ
    • 19世紀半ば(日本−江戸時代末期)には、北アメリカ大陸が金の主要な産地となった。
      • 最初に金が発見されたのは1848年(日本−江戸時代末期)のカリフォルニア。
        • この発見をきっかけにゴールドラッシュが始まり、全世界から多くの人間がカリフォルニアに殺到した(→ フォーティ・ナイナーズ)。
        • ゴールドラッシュによる人口集中で、それまで西部の僻地(へきち)にすぎなかったカリフォルニアは、政治的、経済的に大きな発展を遂げた。
      • ゴールドラッシュは未開発の西部山岳地帯に及び、ネバダ、オレゴン、ワシントンなど西部の各州で金が発見され、金鉱開発をきっかけに西部の経済活動は活発化した。
        • ゴールドラッシュによる西部への人口移動は鉄道の発達を促し、アメリカ西部の開発は大きく進んだ。
    • 1851年(日本−江戸時代末期)、南半球のオーストラリアでも、ビクトリア州で金が発見されると、ゴールドラッシュが始まり、オーストラリアの発展に大きな影響を及ぼした。
    • 1880(明治13)年、アラスカで始めて金が発見され、1899(明治32)年にノーム、1902(明治35)年年にフェアバンクスで金鉱が発見されると、本格的なゴールドラッシュが到来した。
      • 以後、アラスカは急速に発展し、1912(大正元)年にはアメリカの準州として自治が認められた。
    • 1896(明治29)年、カナダのユーコン川の支流クロンダイク川河口の町ドーソンで金が発見され、ゴールドラッシュが起こった。
    • 南アフリカ共和国
      • 1884(明治17)年、ウィトウォーターズランドで金鉱が発見され、1886(明治19)年に採掘が始まると、ゴールドラッシュが起こった。
        • この地域は当時、オランダ系入植者のボーア人が統治していたが、金鉱の発見によってイギリスとの間にボーア戦争が起こり、1902(明治35)年以降は戦勝国イギリスの統治下に入った。
      • 現在、金産出国の第1位は南アフリカ共和国で、年間600t以上の金を産出する。(2007時点)
        • これは全世界の金産出量の約半分に相当する。
  • 日本
    • 奥州
      • 最初の産金の記録は、「続日本紀」の749(天平21)年(奈良時代)2月の項にみられ、現在の宮城県遠田郡にあたる陸奥国国司から、砂金採取の報告があったと記(しる)されている。
        • 4月には陸奥から金13kgが貢金として京に届られた。
        • 東大寺(奈良県奈良市)の大仏の金めっきには、150kg前後の金が使われたという。
        • 奥州藤原氏3代約100年間に、合計約10t(年平均約100kg)の砂金が採れたと伝えられている。
      • 平安時代には、金鉱脈が多く存在する東北地方から、引き続き砂金の採取が続けられた。
        • 12世紀(平安時代後期)に建立された平泉の中尊寺金色堂は、当時の盛んな産金を象徴するもの。
          • この頃、日宋貿易が盛んになり、日本は金を大量に輸出していた。
        • の時期の中国にきたマルコ・ポーロが、「東方見聞録」の中で日本について「黄金の国ジパング」と紹介したのは、金色堂のうわさを聞いたためだといわれる。
        • 室町時代に入っても、や朝鮮への金の輸出は続いた。
    • 近世(江戸時代)以降
      • 16世紀から17世紀初め(戦国時代〜江戸時代初期)にかけて、産金は盛んに行われるようになり、佐渡金山の開発が江戸幕府によって進められた。
        • 佐渡金山は、江戸期には合計40tの金を産出した。
        • 17世紀半ばごろ(江戸時代前期)には薩摩藩の山ヶ野金山が佐渡金山と並んで全国屈指の産金量を記録している。
          • しかし、その後産金は振るわなくなった。
      • 明治期に政府により新しい技術を導入するなどの努力がなされたが、産金量は17世紀中葉のそれには及ばなかった。
      • 1940(昭和15)年には鉱山からの産出量は27tに達するが、60年代(昭和35-)に入ると10t台に、80年代(昭和55-)には3t台に減少した。
        • しかし、1985(昭和60)年に採掘が始められた鹿児島県の菱刈金山は、金の含有量が著しく高く、有望な鉱床として注目されている。
      • 1990年代半ば(平成7)、鉱山からの金産出量は8t台になった。
    • 総産金量
      • 日本の産金量は、奈良時代から安土桃山時代にかけて255t、江戸期に100t、明治初期から1980年代末にかけて1250t、合計1605tと推定される。
      • 古代から世界で採掘された金の総量は約10万tと推定され、日本は世界の1.6%の金を産出したことになる。
  • 金の経済
    • 金は近代以降の世界貿易で、国際通貨の役割をはたした。
      • 金を貨幣制度の基礎におき、政府の発行する通貨が一定量の金と交換されることを保証した金本位制は、1816年(日本−江戸時代後期)にイギリスで最初に確立され、19世紀末(日本−明治時代)には多くの先進国で採用された。
        • 日本では、1897(明治30)年に確立をみた。
        • しかし、第1次世界大戦の勃発(ぼっぱつ)で、各国の金本位制は停止され、戦後、一時は復活したものの、世界大恐慌によって再び停止に追い込まれた。
      • 第2次世界大戦後国際連合にIMF(国際通貨基金)が発足し、当時最大の金保有国だったアメリカ合衆国の通貨、ドルが国際通貨にさだめられた。
        • IMF体制のもとでは金1トロイオンスの交換比率は35ドルに定められていたが、ドルの流通量が世界的に増加し、ドルと交換可能な金の量が大幅に不足したため、1971(昭和46)年、ドルと金との交換は停止された。
    • 現在、金価格は国際市場での需給関係によって決定されるが、国際的な政治・経済の動向によって大きく変動することもある。
      • 1970年代以降、金価格は上昇をつづけ、1980(昭和55)年には1トロイオンス850ドルを記録したが、その後は下降し、1996(平成8)年に入って1トロイオンス約380ドル台に落ち着いた。
    • 日本国内では、1973(昭和48)年に金輸入が、1978(昭和53)年には輸出が自由化され、金取引が活発になった。
      • 1982(昭和57)年、東京金取引所が開設されたほか、新銀行法により銀行や証券会社で金の窓口販売が始められるようになった。
      • 日本の金価格は、主要地金(じがね)業者により、1g当たりで価格が新聞に公示される。
      • ほかに、金地金ディーリング(ロコ・東京取引)が市場として急成長を遂げている。
        • これは、大手地金業者、鉱山、商社を取引メンバーとする現物取引の市場。
  • 参考:エンカルタ2007
地球の宝石箱(長野県塩尻市)

2011/5/18
■豊臣秀吉の黄金の茶室を再現・・・信州ゴールデンキャッスル(長野県松本市)

2010/10/23
2011.01.23

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